第一回、知絵と勝哉のミッドナイト読書会~勝哉の読書感想文編~です!
初回キャスのテーマ本は「森谷明子」の「南風吹く」
まずは感想を語る前に、あらすじをどうぞ!
【あらすじ(※事前公開あらすじと重複)】
瀬戸内海に浮かぶ小さな島、『五木島』。
その島に住まう主人公『小市航太(おちこうた)』は、五木島分校に通う高校三年生だ。
球技部の部長も務めていたもの、部員の怪我や人数の足りなさが原因で、早々に引退をする事が決まり、熱の入らない毎日を送っていた。
そんなあるとき、クラスメイトの『日向子(ひなこ)』が松山で行われる俳句甲子園に出たいと奮闘し始める。
ひょんなことからその熱意に巻き込まれる事になった航太は、苦手なはずの俳句と向き合わうはめになり……。
俳句に進路に、その傍ら、忍び寄る不穏な人間関係の気配に――。航太の最後の分校生活は一体どうなる⁉
俳句甲子園を目指す、小さな島の高校生達の熱い俳句青春小説!
【感想(微ネタバレあり)】
最初に思ったことは現代俳句の言葉って、案外現代語なんだなぁって事でした。
ストーリーの感想とか、そういうのはひとまずさておき、とにかく一番最初にこの本と出会って思った事は、この一言でした。
俳句っていうと、どうしても古典用語が使用されてるものが頭の中に出てきません?
私、実は古典文学って昔から苦手で、学生時のテストではなかなかアレな点数ばかり取ってて……。
しかも理由としては、昔の言葉ってのが難しい、というそんなたぶんありきたりな理由でして……。
だって難しくないですか⁉
いとをかし、を現代語訳すると、めっちゃ趣がイイネ! って感じになるって。
なんで⁉ なしてそうなった⁉ なして⁉って言いたくなりません⁉
だから、俳句が出てくるこの小説と近くの図書館で出会った時、題材は俳句なのかぁ……ってちょっと読むの悩んだんですよね。
ただ表紙の絵柄がすごい好みで、好みな絵柄が表紙の青春小説って基本ハズれがないことが多くて、絶対ストーリー展開は好きな青春ものだって思って、とりあえずパラパラと中身を軽く見てみることにしたんです。
そしたら、本編内に使われてる俳句がいくつか飛び込んできて。
それが思った以上に古典じゃなかったんですよね。
――『今ここがおれのポジション南風吹く』
主人公が制作した俳句なんですけど、俳句で「ポジション」って、しかも一人称「俺」って。全然私の知ってる俳句と違うんですけど……⁉
それで気になって読み進めていく内に、これが俳句は俳句でも、「現代俳句」を取り扱う小説だという事を知ったんです。
現代俳句とはその名の通り、現時代にて生まれる俳句達のことで、主人公とメインとなるキャラ達は皆、今の時代を生きる高校生として、彼ら自信の今、ナウの風景を切り取って俳句にしていくという形で俳句を作っているのです。俳句甲子園にむけて。
俳句甲子園とは、その名前の通りの俳句の甲子園で、実際に行われている全国の高校生による俳句大会となっています。
毎年8月に俳句の聖地、愛媛県松山市で行われる大会です。主人公達はその大会に出場する為に、俳句の制作に挑んでいるのです。
もちろん、メインは現代俳句ですが、その基礎知識は古典俳句に則ったものなので、古典俳句に関するお話もチラホラと本編内に出てきます。
そもそもタイトルの「南風」という単語そのものが、俳句の昔ながらの季語ですからね。現代俳句のその祖である古典俳句への敬意を示すように、俳句の話が盛り込まれています。
が、それだけじゃないのがやはり青春小説の面白いところ。
題材は「俳句」だけど、でもあくまでも小説ジャンルは「青春」。
高校生ならではの進路の悩み、複雑な人間関係など、そういうものも共に書かれています。
特にこのお話のメイン舞台は、五木島と呼ばれる瀬戸内海の中の小さな島。
大きな店はない、若者向けの娯楽施設なんてもっとない、島の住民はご高齢な方々ばかり、分校は廃校寸前、通う生徒の数はそれに伴い激減、バスケ部や野球部なんて大人数が必要な部活は潰れ、代わりに球技部というなんでも運動部ができる程で……。
とにもかくにも、なにもかもが将来性のカケラのない場所なのです。
けれど主人公はそんな島で和菓子店を開いているお父さんの跡を継ぎたいと思っています。
しかしやはりというべきか、こんな島での和菓子店なんて将来が危ういという事で、父には一蹴されてしまいます。
さらには、一緒に暮らしているおばあちゃんが倒れてしまったり、けれど小さな島の病院ではどうしようもないせいで大きな島の外、本土の病院にむかうことになったり……。
このおばあちゃんの事件は、私個人の心に凄く来たシーンでもありますね。
おばあちゃんが本土の病院へ運ばれた、と言われて主人公はかけつけようとするのですが、本土に行くには船に乗らなければならない。
でも、連絡路の船がくる時間は決まっていて、どれだけすぐに駆け付けたくとも駆け付けられない。そうしてやってきた船に乗って本土に向かうその最中、主人公は海を見ながらその心の内を吐露するように無意識にこう口にするんです。
――「……僕ら水の壁に隔てられてます」
全部で十七音。
俳句と同じ音数で出来たそれに、主人公は思わず失笑してしまいます。
主人公にとって苦手だったはずの俳句が、確かに彼の中に染みつき、言うなればその血肉になってきている事がよくわかるシーンであると同時に、こんな時に縋れるものが主人公の中にはそれしかない、といっているようなシーンにも見えます。
小さな今にも消えてしまいそうな未来のない島で暮らしている主人公が、今心を落ち着ける為に頼れるのは俳句しかない。本当の心境は語られていないので想像するしかないけれど、想像すると、なんとも切なく複雑な気持ちにさせられるシーンです。
しかし、実際のところ俳句の存在そのものと、この感覚って似て通ずるものがあるんじゃないかとも思ったシーンでした。
たった十七音という短い言葉の中で、季語などの縛りをつけた上で相手に情景や心理描写を想像させる、それが俳句のだいご味。
このセリフは、そんな俳句のだいご味が上手く活かした上で、同時に主人公の変化具合、その瞬間の心情、といったものまでも一緒くたに詰め込まれたものだと勝手ながら思ってしまいました。
「南風吹く」という作品の本領ここに見たり、といった気持ちになりましたね。
あと私、こういう創造物と想像が絡み合って読者の想像を広げていく感じのシーン大好物なんですよ。もの凄く、趣味性癖に刺さるシーンでした(笑)
【宣伝】
他にも語りたいシーンはあるのですが、全てを語ると長くなってしまうので、続きは本編であるキャス「知絵と勝哉の週末ミッドナイト読書会」にて語りたいと思います。
語れるように頑張ります。雑談ばかりにならないように(笑)
といわけで、その本編の放送日の宣伝です!
初回放送日は以下の日程となっております!
・放送日:令和元年10月27日(日)
・放送時間:22時~22時30分
(時間に関してはひとまずの目安です。
どれくらいのキャスをやるかは、当日の流れによって変わる場合が
あるかもしれませんのでご了承ください)
・テーマ本:森谷明子「南風吹く」(選書担当:勝哉)
大真面目に雑談多めのキャスになると思われます(笑)
休日最後の真夜中のお共に、うるさいけどきっと愉快なことまちがいなしの読書キャスはいかがです?
ぜひぜひ、起こしやってくださいませ~(笑)
勝哉エイミカ。