top of page
検索
  • 執筆者の写真勝哉エイミカ。

『知絵と勝哉の週末ミッドナイト読書会キャス』第3回! テーマ本『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』

知絵と勝哉の週末ミッドナイト読書会キャス、第3回め!


テーマ本は『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』

選書担当者は勝哉です!


年内最後のキャス&感想公開となります。

だからってわけじゃないですけど、感想文楽しく書いてまいりますので、キャス前、キャス後、いやもうキャス最中だろうと読んで下さると幸いです!笑



【あらすじ(※事前公開あらすじと重複)】


「パンは平等な食べもの。誰にでも平等においしいだけ」――。


首都高と国道246が重なり合う、都会『三軒茶屋』

その片隅にある住宅街にその不思議なパン屋はあった。


午後23時から午前29時という、真夜中のみに営業するパン屋『ブランジェリークレバヤシ』


店員は二名。

オーナー兼パン職人見習いの『暮林陽介』。パン職人の『柳 弘基』。

そんなお店に、ある事情から転がりこむことになった女子高生の『篠崎希実』。

不思議なパン屋の生活に、少しずつだけど慣れ始めたそんな頃、可愛いお客様によるパン万引き事件が起きて……。


不思議な真夜中のパン屋と、そこに集う人々とのほろ苦くて甘酸っぱい人生の物語――。



【感想(※微ネタバレあり。ご注意を)】


大沼紀子作、『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』は、ポプラ文庫から出ている『真夜中のパン屋さん』、略して『まよパン』シリーズの第1巻にあたる小説です。


全6巻のシリーズものではありますが、一応、1巻は1巻でひとまずの落ち着きと終わりがついてる作品ではあるので、今回読書キャスのテーマ本と選書させて頂きました。もし、知絵と勝哉の読書感想&キャスにて興味をもった方がいらっしゃいましたら、他の巻共々、ぜひとも読んでみてください! 


さて、このまよパンシリーズ。個人的なお話ではありますが、最初にこの表紙を見て思い浮かぶのは、2011年だとか2012年ぐらいの頃の記憶だったりします。


その当時、世の中ではいわゆる『お仕事系』と呼ばれるジャンルに大きなブームが起きていた年でした(今でもそこそこ人気ありますよね、このジャンル。最近はライトミステリーと組んでるものをよく見るかも……?(当社比))


そんな中で、ちょうどその代表枠というレベルで人気を博し、どの書店でも平積みにされていたのがこのまよパンシリーズでした。


なんだか絵本のタイトルにでもありそうなかわいらしいタイトルに、女性向けのイラストで描かれた登場人物達の表紙(少女向けというよりは、ちょっと大人っぽい雰囲気も感じる絵柄なので『女性向け』と書かせて頂きます)。後ろに描かれてるパンのイラストもおいしそうですし、ちょっと心惹かれる作品でした。


が、勝哉には、人気作品には手が出せないという、めんどくさいあまのじゃくな精神が宿っておりまして……。当時はなんと手に取らずに終えてしまったのです(しかもその頃ハマッていた作家こそが、成田良悟であるというね……)。


それから約7年だか8年後の2019年、春。

ふいに訪れた図書館の本棚にいたところを見つけたのが、この本との再会でした。


「そういえば人気あったな」とそんな気軽な気持ちで手に取ったシリーズ。お仕事小説が大ブームであったこともあり、頭の中では「パン屋に関するお仕事系の知識がたくさん詰め込まれた物語になってるのかな」とすら考えていました。


読んでみてびっくり(なんか、毎回この台詞言ってますね)。

書かれていたのは、もの凄く深い『ヒューマンドラマ』の世界!


しかも、登場人物一人一人の闇が深い。

たとえば主人公の『希実』は、父親がおらず、母親の手のみで育てられてきたのですが、この母親というのが厄介な人物なのです。


どこかちゃらんぽらんとしているというか、マイペースというか……、希実のことを色んな知り合いに預けたりしては、自分はしばらく全然違うところで過ごしていて、それをかれこれもう数えられないほどにくり返しているのです。


その凄さは、希実に『カッコウの母』と心の中で呼ばれているほどです。カッコウは自分の卵を全く知らない鳥の巣に産み、全く知らない鳥に育てて貰うのです。そのさまが母親と被るということで、『カッコウ』と本編では何度も言われています。


他にも、メインである店員二人『暮林陽介』と『柳 弘基』もまたそれぞれに闇を抱える登場人物達です。二人ともその闇の形は全く違っていますが、しかしその点を掘り深めて読まされる度に、なんとも言えない苦く重たい気持ちになる過去であることは確かです。


お仕事系ってなんだっけ(宇宙猫)って気持ちでいっぱいです。


けれど、『パン屋』がなにもないわけじゃありません。


ブランジェ(パン職人のこと)である弘基が仕事中の描写だったり、新作のパンに関するアイデア出しだったり、世界中のパンにまつわる面白い豆知識のようなお話もひょっこりちょこちょこと顔を出しています。


そしてそのちょこちょこっとしたもの達が、こっそりと登場人物達の心を温めているのです。


本編中に度々登場してくる言葉で、「パンは平等な食べもの」というものがあります。


それは暮林さんの亡き奥さんがその昔に言った言葉で、本編内では彼自身が口にする言葉でもあります。

「パンは平等な食べもの。道端でも、公園でもどこでだって食べられる。おいしいパンは誰にでも平等においしいだけ」

まるで合言葉かなにかのように度々、本編の中で口にされるこの言葉は、きっとこの話の根本部分となっているものなのでしょう。


パンというのは、日常の中で簡単に食べられる、食べようと思える食べ物です。

仕事や学校の帰り道だったり、ちょっとした小腹が空いた時、逆に朝ごはんや昼食といったしっかりしたものを食べたい時まで、様々な場面で食べることができます。


意識して考えたことはないけれど、でもこうして考えてみると私達の日常に寄り添ってくれている、ソッとした何かあたたかなものなのです。

お腹がすくと悲しくなるけれど、食べると満腹で幸せになる。どんな食べ物も、それをつれてきてくれるけれど、パンほどにどこでもどんな時でも食べれて、あたたかさをつれて来てくれる食べ物はないかもしれません。


そうして、そんな日常的なちょっとしたものだから、きっと闇を抱えた人達の心の中にも届くものがあるのでしょう。

押しつけがましくなく、だからといって拒絶的でもなく、ただただ平等に口にする人達全員においしさだけを与えてくれる――。


パン作りの工程も、生地一つこねるだけでも弘基いわく「愛が必要」だとかなんだとかで、優し過ぎても強すぎてもダメと、まるで人の心を扱うさまそのものです。パンと人、まったくもって違うもの同士なのに、通じる部分を感じてしまえるなんて不思議なものですね。


人とパン、そして人と人――。互いの繋がりの複雑さから生まれる闇い苦い気持ちになる反面、たったひとつの食べ物で皆が平等においしさをわけあえるあたたかさに、心がホッとする一冊でした。




……そういえば、余談ですが、前回の『和菓子のアン』に引き続き、食べ物&お仕事系の小説になっていますが、特に意図はしていません。気がついたらこうなっていました笑


『和菓子のアン』も、なんだかんだその前の『南風吹く』とは日本文化繋がりだったりとしてますが、これも全部たまたまです。知絵氏と二人で「あれ? なんか似たネタ続いてない?」と笑い合ってしまいました笑


それでは。

キャスにて、またお会いしましょう。


【知絵と勝哉の週末ミッドナイト読書会キャス、第3回め】


・放送日:令和元年12月22日(日)

・放送時間:22時~22時30分

     (時間に関してはひとまずの目安です。

      どれくらいのキャスをやるかは、当日の流れによって変わる場合が

      あるかもしれませんのでご了承ください)

・テーマ本:大沼紀子『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』(選書担当:勝哉エイミカ)



勝哉エイミカ

閲覧数:2回0件のコメント
bottom of page